[資料 No.21]
文献解説表
標題
保存期腎不全患者におけるシャンピニオンエキスの尿毒症物質,腸内菌叢および糞便性状に及ぼす影響
著者
佐中孜、茅野大介、江口文陽
掲載
応用薬理 76 (5/6) 109-115 (2009)
要旨
保存期腎不全患者を被験者として、シャンピニオンエキスを3ヵ月間連続摂取させ、腎不全の進行に関与していると考えられている血中インドキシル硫酸とその前駆物質の糞便中のインドールなどの腸内腐敗産物およびその腐敗産物の産生に関与しているクロストリジウム菌などの腸内細菌に対する影響について検討した。過剰なインドキシル硫酸は尿細管細胞を破壊し血中クレアチニン値を上昇させるが、シャンピニオンエキス摂取により、摂取前に比べて血中インドキシル硫酸値は低下し、同時期に血清クレアチニン値の上昇が抑えられた。また、シャンピニオンエキスの投与によりクロストリジウム菌などの腸内有害菌が減少し、糞便中のインドールの減少が見られた。このことから、シャンピニオンエキスの摂取は腸内菌叢を正常にさせることにより、腎不全の進行に深く関与しているインドキシル硫酸を低減させ腎不全の進行を抑制している可能性が示唆された。
目的
保存期腎不全患者の腎不全進行にシャンピニオンエキスが及ぼす影響を明らかにする。
具体的手法
・6から12カ月の予備観察期間に腎不全の進行が認められ、クレアチニンクリアランス値が>40ml/min/1.73m2の範囲にあり、低タンパク質食事療法を実施している保存期腎不全患者8名を被験者とした。
・1包中にシャンピニオンエキス1gを含む粉末状の試験食を朝夕1包ずつ合計2包又は夕食後1回2包、食後30分以内に粉末のまま又はスープ状にして摂取させた。
・検査項目は、インドキシル硫酸を含む血液生化学検査および尿化学検査、さらに採取した糞便により、腸内菌叢の検索と糞便腐敗産物、有機酸および糞便性状の測定を実施した。
結果の要約
まとめ
腎臓の尿細管細胞を壊し、腎不全を進行させる原因物質と考えられているインドキシル硫酸は、腸内有害菌によって産生されたインドールにより腸管から肝臓を経て合成される。シャンピニオンエキスの摂取により、インドールなどの腐敗産物および腐敗産物を産生する有害菌の有意な減少(改善)と血中インドキシル硫酸の有意な減少(改善)が認められた。また血中クレアチニン値の上昇の抑制(改善)も認められたので、シャンピニオンエキスの摂取は腎不全症状の進行を遅らせる手段として期待された。